不確定な世界

科学の話題を中心に、勉強したことや考えたことを残していきたいと思います

2017-01-01から1年間の記事一覧

量子コンピュータの基本素子・量子ビットのハードウェア実装(超伝導磁束編その5~データの読み出し(測定)~)

その1~素子構造~ その2~超伝導リング詳細~ その2.5~ノイズ耐性~ その3~初期化~ その4~データの書き込み・演算 では最後に、量子ビットに書き込んだデータを読み出す技術、つまり「量子を観測する」とは実際にはどういうことなのか、を見てい…

量子コンピュータの基本素子・量子ビットのハードウェア実装(超伝導磁束編その4~データの書き込み・演算~)

その1~素子構造~ その2~超伝導リング詳細~ その2.5~ノイズ耐性~ その3~初期化~ では、初期化した量子ビットにデータを書き込んで演算を行う工程、つまり量子ゲートがいかにハードウェアで実現されるかを見ていこう。基本的には以前紹介したシリ…

量子コンピュータの基本素子・量子ビットのハードウェア実装(超伝導磁束編その3~初期化~)

その1~素子構造~ その2~超伝導リング詳細~ その2.5~ノイズ耐性~ では、具体的に超伝導磁束量子ビットの制御方法を見ていこう。まずは、量子ビットにデータを書き込む前に強制的にリセットを行う過程である「初期化」について説明する。 なお、量子…

量子コンピュータの基本素子・量子ビットのハードウェア実装(超伝導磁束編その2.5~ノイズ耐性~)

その1~素子構造~ その2~超伝導リング詳細~ 前回の記事では、超伝導リングに加える磁場を変化させることによって量子ビットのエネルギーの上下関係が入れ替わることを説明した。磁場を強くしていく途中で右回りの電流と左回りの電流のエネルギーが等し…

量子コンピュータの基本素子・量子ビットのハードウェア実装(超伝導磁束編その2~超伝導リング詳細~)

その1~素子構造~ では、超伝導リングをもっと詳しく見ていこう。はじめに、量子ビット(+SQUID)の拡大写真を再掲しておく(図2)。図の右側は回路図表記である。 図2 左:量子ビット拡大写真(文献[1]より転載)、右:回路図 ジョセフソン接合 超伝導…

量子コンピュータの基本素子・量子ビットのハードウェア実装(超伝導磁束編その1~素子構造~)

はじめに 量子コンピュータのハードウェア解説シリーズ第二弾は、超伝導回路。現状開発が進んでいる量子コンピュータの殆どは超伝導回路を用いたものである(最近話題の量子ニューラルネットは除く*1)。 ただし、一口に超伝導量子ビットと言っても、様々な…

「量子暗号」;石井茂 著 読書感想

はじめに 今回紹介するのは、石井茂著「量子暗号」だ。 量子力学全般、あるいは暗号全般について解説した本の中で、話題の一つとして量子暗号についても触れているものは多い。しかし、丸々一冊分「量子暗号」の解説だけに特化している本というのは貴重だ。…

「この話有名だけどそういえば元ネタ知らないな」と思って調べた論文まとめ

確かに調べたが読んだとは言っていない。随時追加予定。 古い文献が多いが原著を調べるのが目的なので、リンクはできるだけ後世のリタイプ版よりもオリジナル版を優先している。文字のフォントが読みにくかったりコピペできなかったりするが、ご容赦願いたい…

ドラクエ11をクリアした

ここ2ヶ月程、ドラクエ11(3DS)に夢中だった。ドラクエをやるのは中学生のときの8以来で、ゲーム自体も10年ぶりだった(興味の対象がライトノベルや深夜アニメに移っただけなので、決して高尚な生活をしていたわけではないが)。始めるまでは億劫だっ…

一見平等なトレードから必然的に不平等が生まれる(pythonシミュレーション)

池谷裕二さんの「脳はなにげに不公平」を読んでいて、初っ端から面白そうで試すのが簡単そうなお話があったので、pythonでシミュレーションしてみた。 シミュレーション内容 「100人のプレイヤー全員に1万円を渡す。100人の中からランダムに2人選び…

量子力学によく出てくる「エルミート」って何?その物理的意味は?

はじめに 量子力学ではよく、「演算子はエルミートである」と仮定して議論を進める。そこで「エルミート演算子」あるいは「エルミート行列」について調べてみると、難解怪奇な数学理論についてはたくさん出てくるが、「ふーん。で、エルミートって、結局はど…

「ゼロから作るDeep Learning」を読んだ(後編)

前回から引き続き、「ゼロから作るDeep Learning」の読書メモ。 4章 ニューラルネットワークの学習 損失関数 2乗差誤差はわかりやすいが、交差エントロピー誤差は直感的に意味を把握しにくい。しかしソフトマックス関数と組み合わせて使うことを考慮に入れ…

「ゼロから作るDeep Learning」を読んだ(前編)

斎藤康毅著「ゼロから作るDeep Learning」を読んだので、その読書メモ。 人工知能・ディープラーニングには前々から興味を持っていてブルーバックスレベルの本を数冊読んでいたが、この分野の本格的な専門書を読むのは初めてだ。この本は有名なので、既に無…

量子コンピュータの基本素子・量子ビットのハードウェア実装(シリコン編おまけ~エンジニアの視点で量子ゲートを実装する~)

その1~素子構造~その2~スピンとは何か~その3~データの初期化と読み出し~その4~データの書き込み・演算~ 前回の記事からだいぶ時間が経ってしまった…。まあ1ヶ月は経ってないからセーフかな。 今回は量子ゲートが実際にどのように実装されている…

量子コンピュータの基本素子・量子ビットのハードウェア実装(シリコン編その4~データの書き込み・演算~)

その1~素子構造~ その2~スピンとは何か~ その3~データの初期化と読み出し~ さて、今回は量子ビットへのデータの書き込みや演算、すなわち「量子ゲート」を現実のハードウェアでいかに実現するか、という部分を解説する。これが終われば、一通り「量…

量子コンピュータの基本素子・量子ビットのハードウェア実装(シリコン編その3~データの初期化と読み出し~)

その1~素子構造~ その2~スピンとは何か~ 今回は量子ビットの初期化と読み出しについて解説する。本当は初期化→データ書き込み(演算)→データ読み出しの順で説明したかったのだが、本デバイスは設計上初期化と読み出しを切り離すことが難しいので、書…

量子コンピュータの基本素子・量子ビットのハードウェア実装(シリコン編その2~スピンとは何か~)

その1~素子構造~ 前回の記事で述べたように、シリコンチップの量子ドットという構造の中に電子が閉じ込められている。シリコン量子コンピュータでは、この電子がもつ「スピン」にデータを埋め込むわけだが、そもそも「スピン」とは何なのだろうか。 電子…

量子コンピュータの基本素子・量子ビットのハードウェア実装(シリコン編その1~素子構造~)

はじめに 量子コンピュータについて、”0と1を同時に計算する”という程度には知っている人も多いだろう。しかし、具体的に量子コンピュータのチップにはどんな回路が載っていて、どのようにハードウェアが駆動するのか?という部分は殆ど知られていないのが現…