不確定な世界

科学の話題を中心に、勉強したことや考えたことを残していきたいと思います

E資格2022#1合格

2022年2月19日(土)に受験したJDLA Deep Learning for ENGINEER(通称E資格)に無事合格した。

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分野別得点率

応用数学:100 %
機械学習:89 %
深層学習:96 %
開発環境:100 %
機械学習の数字を見て一瞬「そんなにミスったっけ?」とびっくりしたが、そもそも出題数が少ないためだと気が付いて一安心。おそらく24/27といったところだろう。深層学習も出題数を考えると2~3問ミスったことになる。1問は試験が終わってすぐに間違いに気が付いたが、残りはどこだろう…?気になる。


以下、受験体験記的もの。

受験のモチベーション

私はこの数年間、ディープラーニング機械学習について書籍を中心に独学で学んできた(その中のいくつかはこのブログで読書感想記事を書いている)。E資格を受験する目的は人それぞれだが、私の場合、自分が独学してきた知識が世間に通用するかどうかを確かめたかったことが大きな理由である。結果的にそれなりの高得点で合格したということで、この目的は肯定的に達成することができたと思う。

認定講座

E資格の受験には、事前にJDLA公認の機関から講座を受講する必要がある。私はスキルアップAI社「現場で使えるディープラーニング基礎講座」のオンライン講座(5万円)のプランを受講した。数十万円の講座もある中では格安と言っていい値段だが、その分サポートは薄いのである程度の前提知識や独学力は必要になる。私はそこら辺は全く心配していなかったので、迷わずこの講座を選択した。
講座の内容も分かりやすく、特にこれまで知識が手薄だったRNN系や自然言語処理周りへの抵抗感がなくなったのは間違いなく本講座のおかげである。LSTMの計算グラフなんて本を読むだけなら絶対スキップしていた。また、修了課題の一つである「手書き文字認識モデルの作成」も手ごたえがあった。テストデータ正解率0.975当たりまでは簡単に到達したがそこからかなり試行錯誤が必要になる絶妙な難易度だった。もちろん最終的にはクリアしたのだが、その際に壁を突破する決定打となったのが「よくお勧めされているけど今まで自分では使ったことがなかった、ある手法」だった。なるほどこれは強力だ、と自分の肌感覚として納得することができ、いい経験だった。

なお、スキルアップAIはE資格模試も提供しており(ただし、「現場で使えるディープラーニング基礎講座」受講者限定である)、私はこちらも受講した。年明けに受験し一発で合格点を取ったことで勉強の手ごたえを感じ、だいぶ心に余裕ができた。私が今回E資格の勉強に使用した教材の中で、最も本番のレベル感に近かったのはこの模試である。少々高額ではあるが、予算に余裕があるならぜひ受けた方が良い。

勉強に使用した書籍

上述した認定講座以外に、E資格対策として読んだ本は主に次の2冊。

ゼロから作るDeep Learning

グッドフェロー本はあまりにも学術的過ぎるので、事実上本書がE資格の公式テキストと言ってもいいだろう。これを機に再読した。かつて読んだときより明らかに知識の解像度が上がっており、特にかつてブラックボックスだったim2colが理解できるようになったことがうれしかった。

徹底攻略ディープラーニングE資格エンジニア問題集 第2版

通称黒本。過去問が公開されていないE資格において唯一の市販問題集。たとえE資格を受けなくても、「演習問題をこなすことで理解を深める」という勉強スタイルが好きな人にはお勧めの一冊である。掲載されている問題の中にはやや難しいものもある*1が、本書を十分にこなしていれば試験には受かるだろう。なお本書には模擬試験1回分も付いているが、本番のレベル感に対してかなり優しめなので、これが解けたからといって「なんだ、こんなもんか」と油断しないように注意してほしい。

その他、副読本として次の2冊をさっと読んだ。

ゼロから作るDeep Learning ❷ ―自然言語処理

こちらもE資格対策のバイブルとして紹介されることが多い。私も本当は写経しながらじっくり読みたかったが、ちょうど仕事が忙しくなりあまり本格的に取り組むことができなかった。自然言語処理関係についてはスキルアップAIの教材をメインに勉強した。

深層学習

いわゆるグッドフェロー本。一応E資格の公式テキストなので目は通した。色々示唆的なことが書いてあり考察(妄想)しながら読む分には面白いが、”E資格対策”としてはあまりにも重すぎる。純粋に学問的興味がある人が読めばいいと思う。

勉強期間

E資格のための勉強期間は2021年11月18日から始めてちょうど3か月。おおざっぱに分けると、最初の1か月で認定講座を修了、次の1か月で黒本や模試、スキルアップAIの知識テストなどを繰り返し解き(この期間がいわゆる”資格の勉強”感が一番強かった)、最後の1か月は上述した本を読んだりして知識を体系的に整理する、という配分だった。
なお、この勉強期間や読んだ本というのはあくまでも「E資格対策として」であり、通算では他にも技術書・理論書・一般向け啓蒙書や新書、あるいは哲学寄りの本や脳科学などの周辺分野の本といった、それなりの量の本を読んで勉強してきた。そのような前提知識があってこその合格なので、軽々しく「3か月で受かる」などと言うつもりはない。これからE資格を受験する皆さんは、自分のペースで頑張っていただきたい。

試験本番の感想

出題内容については規約のため詳しく書くことはできないが、まさに解いている最中に「ああ、なるほど!面白いなぁ」と思えるような問題もあり、学びのある非常に質の良い試験だった。120分で100題以上の問題を解くことになるので時間が心配になる人もいると思うが、過剰な心配はいらない。確かに平均すると1問1分の計算になるが、実際には即答できる問題も多いので、多少計算問題で躓いたり*2、論文出典の難問をじっくり考えたりしても、時間的にはかなり余裕がある。さらにCBTでは本を手で押えたり解答をメモしたりする手間がないので、想定よりもサクサク進むはずだ。私の場合、一通り解き終わった時点で残り時間がまだ53分あったので、見直しの時間を十分に確保することができた。

最後に

資格なんて役に立たないという人もいるが、E資格はそもそも免許的な性格の資格ではなく、知識を更新し続けることが前提で、あくまでも勉強の指針である。2022#2からはシラバスが変更になるらしいので、私もさっそく知識の更新が必要そうだ。最近は安価な認定講座もあり、E資格受験のハードルもだいぶ下がってきている。気になっている人はぜひチャレンジしてほしい。

*1:AlphaGOの問題とか初見で解ける人がいるのだろうか?

*2:なお私は本番で、計算結果が選択肢に無く焦るという展開が2回あった