不確定な世界

科学の話題を中心に、勉強したことや考えたことを残していきたいと思います

「大規模言語モデルは新たな知能か」;岡野原大輔著 読書感想

本日紹介するのは、岡野原大輔著「大規模言語モデルは新たな知能か」。 著者の岡野原氏は日本が誇る天才集団、Preferred Networksの共同創業者として著名である。学生時代には言語モデルを研究していたらしく、まさに大規模言語モデルを語るのにふさわしい人…

「つくりながら学ぶ!PyTorchによる発展ディープラーニング」;小川雄太郎著 読書感想

本日紹介するのは、小川雄太郎著「つくりながら学ぶ!PyTorchによる発展ディープラーニング」。 書名に「発展」とあるように、本書で扱われる手法は非常に発展的・応用的だ。物体検出のSSD、姿勢推定のOpenPose、異常検知のAnoGANなどは、メディアや書籍など…

E資格2022#1合格

2022年2月19日(土)に受験したJDLA Deep Learning for ENGINEER(通称E資格)に無事合格した。 分野別得点率 応用数学:100 % 機械学習:89 % 深層学習:96 % 開発環境:100 % 機械学習の数字を見て一瞬「そんなにミスったっけ?」とびっくりしたが、そも…

「ゼロからつくるPython機械学習プログラミング入門」;八谷大岳著 読書感想

本日紹介するのは、八谷大岳著「ゼロからつくるPython機械学習プログラミング入門」。 私はこれまで機械学習の本を何冊か読んできたが、古典的な機械学習に関する入門書は、実質的にscikit-learnのチュートリアルで終わっていることも多い。機械学習の中身を…

「量子コンピュータが本当にわかる!」;武田俊太郎著 読書感想

本日紹介するのは、武田俊太郎著「量子コンピュータが本当にわかる!」。 著者の武田先生は量子テレポーテーションで有名な古澤研のOBで、最近独立した研究室を立ち上げた若手研究者である。以前紹介した藤井先生が理論の専門家であるのに対し、武田先生は光…

「驚異の量子コンピュータ」;藤井啓祐著 読書感想

本日紹介するのは、藤井啓祐著「驚異の量子コンピュータ」。 著者の藤井先生は量子誤り訂正の理論を専門とする研究者であり、量子コンピュータの理論分野では日本を代表するトップランナーである。本書は主に「ゲート型」とか「万能型」と呼ばれるタイプの量…

「Pythonによる数値計算とシミュレーション」;小高知宏著 読書感想 

本日紹介するのは、小高知宏著「Pythonによる数値計算とシミュレーション」。 元々はC言語版が古くから出版されていて、本書はそのPython版である。読者層は情報系が想定されているが、小高先生の本はサンプルプログラムの実装が素朴でわかりやすく、プログ…

「Pythonによる機械学習入門」;株式会社システム計画研究所編 読書感想 

本日紹介するのは、、株式会社システム計画研究所編、「Pythonによる機械学習入門」。 私は深層学習から入ってきたクチなので、ニューラルネットワーク以外の機械学習手法にはほとんどなじみがない。とりあえずscikit-learnの使い方でも覚えるかと手に取った…

「スッキリわかるJava入門 第2版」;中山清喬・国本大悟著 読書感想

本日紹介するのは、中山清喬・国本大悟著、「スッキリわかるJava入門 第2版」。 私は学校ではC言語を習い、仕事では主にPythonを使っている。今までJavaを学ぶ機会はなかったのだが、存在はもちろん知っていたし興味もあったので、軽く入門してみようと元旦…

「眼の誕生」;アンドリュー・パーカー著 読書感想

本日紹介するのは、アンドリュー・パーカー著「眼の誕生」。 日本におけるディープラーニングの第一人者である松尾豊先生が、著書や講演などでディープラーニングのことを「機械が眼を獲得した」と表現し、本書をよく参考文献として挙げている。そのため、本…

「世界を変えた書物」展@上野の森美術館

3連休の目玉イベントとして、金沢工業大学が主催する「世界を変えた書物」展(上野の森美術館)に行ってきた。 www.kanazawa-it.ac.jp歴史上の天才科学者たちが後世に残した偉大な書物の数々。その実物をこの目で見ることができるという、科学ファンなら必…

「nature 科学」シリーズ;竹内薫 監修 読書感想

今回紹介するのは、 「nature 科学 系譜の知」 「nature 科学 未踏の知」 「nature 科学 深層の知」 の3冊。 「nature」は有名な科学論文雑誌なので、ご存じの方も多いだろう。そのnature誌の一般向け解説コラム「News & Views」過去10年分の中からイチオ…

「ディープラーニングがわかる数学入門」;涌井良幸・涌井貞美 著 読書感想

本日紹介するのは、涌井良幸・涌井貞美 著「ディープラーニングがわかる数学入門」。ディープラーニングに関してはこれまでに「ゼロからわかるDeep Learning (感想記事)」「機械学習と深層学習-C言語によるシミュレーション- (感想記事)」など、実装中心…

「機械学習と深層学習-C言語によるシミュレーション-」;小高知宏 著 読書感想

年始に買って積読していた、小高知宏著「機械学習と深層学習-C言語によるシミュレーション-」を読み終わった。 本書の特徴は、事実上Pythonに支配されている機械学習や深層学習のプログラムをC言語で学べること。しかも、特殊なライブラリに頼ることなく、き…

量子コンピュータの基本素子・量子ビットのハードウェア実装(超伝導磁束編その5~データの読み出し(測定)~)

その1~素子構造~ その2~超伝導リング詳細~ その2.5~ノイズ耐性~ その3~初期化~ その4~データの書き込み・演算 では最後に、量子ビットに書き込んだデータを読み出す技術、つまり「量子を観測する」とは実際にはどういうことなのか、を見てい…

量子コンピュータの基本素子・量子ビットのハードウェア実装(超伝導磁束編その4~データの書き込み・演算~)

その1~素子構造~ その2~超伝導リング詳細~ その2.5~ノイズ耐性~ その3~初期化~ では、初期化した量子ビットにデータを書き込んで演算を行う工程、つまり量子ゲートがいかにハードウェアで実現されるかを見ていこう。基本的には以前紹介したシリ…

量子コンピュータの基本素子・量子ビットのハードウェア実装(超伝導磁束編その3~初期化~)

その1~素子構造~ その2~超伝導リング詳細~ その2.5~ノイズ耐性~ では、具体的に超伝導磁束量子ビットの制御方法を見ていこう。まずは、量子ビットにデータを書き込む前に強制的にリセットを行う過程である「初期化」について説明する。 なお、量子…

量子コンピュータの基本素子・量子ビットのハードウェア実装(超伝導磁束編その2.5~ノイズ耐性~)

その1~素子構造~ その2~超伝導リング詳細~ 前回の記事では、超伝導リングに加える磁場を変化させることによって量子ビットのエネルギーの上下関係が入れ替わることを説明した。磁場を強くしていく途中で右回りの電流と左回りの電流のエネルギーが等し…

量子コンピュータの基本素子・量子ビットのハードウェア実装(超伝導磁束編その2~超伝導リング詳細~)

その1~素子構造~ では、超伝導リングをもっと詳しく見ていこう。はじめに、量子ビット(+SQUID)の拡大写真を再掲しておく(図2)。図の右側は回路図表記である。 図2 左:量子ビット拡大写真(文献[1]より転載)、右:回路図 ジョセフソン接合 超伝導…

量子コンピュータの基本素子・量子ビットのハードウェア実装(超伝導磁束編その1~素子構造~)

はじめに 量子コンピュータのハードウェア解説シリーズ第二弾は、超伝導回路。現状開発が進んでいる量子コンピュータの殆どは超伝導回路を用いたものである(最近話題の量子ニューラルネットは除く*1)。 ただし、一口に超伝導量子ビットと言っても、様々な…

「量子暗号」;石井茂 著 読書感想

はじめに 今回紹介するのは、石井茂著「量子暗号」だ。 量子力学全般、あるいは暗号全般について解説した本の中で、話題の一つとして量子暗号についても触れているものは多い。しかし、丸々一冊分「量子暗号」の解説だけに特化している本というのは貴重だ。…

「この話有名だけどそういえば元ネタ知らないな」と思って調べた論文まとめ

確かに調べたが読んだとは言っていない。随時追加予定。 古い文献が多いが原著を調べるのが目的なので、リンクはできるだけ後世のリタイプ版よりもオリジナル版を優先している。文字のフォントが読みにくかったりコピペできなかったりするが、ご容赦願いたい…

ドラクエ11をクリアした

ここ2ヶ月程、ドラクエ11(3DS)に夢中だった。ドラクエをやるのは中学生のときの8以来で、ゲーム自体も10年ぶりだった(興味の対象がライトノベルや深夜アニメに移っただけなので、決して高尚な生活をしていたわけではないが)。始めるまでは億劫だっ…

一見平等なトレードから必然的に不平等が生まれる(pythonシミュレーション)

池谷裕二さんの「脳はなにげに不公平」を読んでいて、初っ端から面白そうで試すのが簡単そうなお話があったので、pythonでシミュレーションしてみた。 シミュレーション内容 「100人のプレイヤー全員に1万円を渡す。100人の中からランダムに2人選び…

量子力学によく出てくる「エルミート」って何?その物理的意味は?

はじめに 量子力学ではよく、「演算子はエルミートである」と仮定して議論を進める。そこで「エルミート演算子」あるいは「エルミート行列」について調べてみると、難解怪奇な数学理論についてはたくさん出てくるが、「ふーん。で、エルミートって、結局はど…

「ゼロから作るDeep Learning」を読んだ(後編)

前回から引き続き、「ゼロから作るDeep Learning」の読書メモ。 4章 ニューラルネットワークの学習 損失関数 2乗差誤差はわかりやすいが、交差エントロピー誤差は直感的に意味を把握しにくい。しかしソフトマックス関数と組み合わせて使うことを考慮に入れ…

「ゼロから作るDeep Learning」を読んだ(前編)

斎藤康毅著「ゼロから作るDeep Learning」を読んだので、その読書メモ。 人工知能・ディープラーニングには前々から興味を持っていてブルーバックスレベルの本を数冊読んでいたが、この分野の本格的な専門書を読むのは初めてだ。この本は有名なので、既に無…

量子コンピュータの基本素子・量子ビットのハードウェア実装(シリコン編おまけ~エンジニアの視点で量子ゲートを実装する~)

その1~素子構造~その2~スピンとは何か~その3~データの初期化と読み出し~その4~データの書き込み・演算~ 前回の記事からだいぶ時間が経ってしまった…。まあ1ヶ月は経ってないからセーフかな。 今回は量子ゲートが実際にどのように実装されている…

量子コンピュータの基本素子・量子ビットのハードウェア実装(シリコン編その4~データの書き込み・演算~)

その1~素子構造~ その2~スピンとは何か~ その3~データの初期化と読み出し~ さて、今回は量子ビットへのデータの書き込みや演算、すなわち「量子ゲート」を現実のハードウェアでいかに実現するか、という部分を解説する。これが終われば、一通り「量…

量子コンピュータの基本素子・量子ビットのハードウェア実装(シリコン編その3~データの初期化と読み出し~)

その1~素子構造~ その2~スピンとは何か~ 今回は量子ビットの初期化と読み出しについて解説する。本当は初期化→データ書き込み(演算)→データ読み出しの順で説明したかったのだが、本デバイスは設計上初期化と読み出しを切り離すことが難しいので、書…